- 「Truth In Fantasy 11 インド曼陀羅大陸 神々 / 魔族 / 半神 / 精霊」
- 発行元:新紀元社(1991年)
- 著:蔡丈夫
- 判型:文庫判
神話や宗教を扱った書籍は
ちょっと難しめで取っつきにくそうなイメージがあるのですが、
これはとても親しみやすいです。
イラストやコラムも多いので初心者な私でも飽きずに楽しめるし、
ちょくちょくお世話になっています。
この本の主題は、「ヒンドゥ教の聖典に登場する神々、魔族、精霊などの
キャラクター(神格)の紹介」(P6「序文 / ヒンドゥ教の神々」より抜粋)。
神様ごとに
「別名・神格(司っている分野や、関連のある神様の名前)・持物・仏教名」が
見やすくまとめられているのも特徴の1つ。
こういうの、親切で助かります。
本文は6章で構成されています。
それぞれ、「ヒンドゥ教の“三大神”」「世界守護神」「インドの女神たち」
「魔族」「獣神、半神、精霊たち」「古き神々」
というタイトルが付けられています。
個人的に特におもしろいと思ったのは、ラストの2章でした。
日本はもちろん、世界各地の昔話や民話に登場する
妖怪や妖精といったキャラクターが大好きなのです。
その土地の人々の生活に密着していて、おもしろいなぁ。
それに、有名どころの神様の情報は、他の本やネット上でも目にする機会が多いので、
その分、ここで初めて知ったややマイナーな神々や精霊のエピソードは新鮮でした。
「魔族」の章の序文の見出しに
「神々と魔族の区別が不明瞭なインド神話」とありました。
私がインド神話に対して抱いている印象は、まさしくこれ。
絶対的な善神というものも、その逆も、存在しないのです。
そして、やっていることはやたらとスケールが大きいのに、
怒ったり嫉妬したり喧嘩したり、妙に人間くさいのも魅力的。
大きな戦いのそもそもの発端が
想い人に振られた女性の怒りだったりとか(「ラーマーヤナ」のシュールパナカー)、
ヴィシュヌとブラフマーが「世界の創造主」の名をかけて口論したとか、
いろいろと出てきて興味深いです。
あちこちに掲載されているコラムでは、
さまざまな角度からヒンドゥ教について知ることができます。
生活習慣や儀式・祭礼に関する読み物がほとんどですが、
「タブーと戦争」(P221)では、
あの有名な「セポイの反乱」の背景を知ることができました。
ヘぇー、へぇー、知らなかったー! こういう事情があったのですね。「イギリス統治下のインドで、最大の反乱戦争といわれる『セポイ(傭兵)の反乱』(1857)の直接の発端は、イギリス当局から傭兵に支給された弾丸の薬莢に牛と豚の脂を混ぜたものが使われていたことだ。ヒンドゥ教徒にとって牛は神聖な生き物であり、イスラム教徒の場合、豚が不浄とされている。銃に薬莢を装填する際、薬莢の端を口でちぎる。つまり、傭兵たちは必然的に牛や豚の脂を口にすることになってしまうのである。こうした侮辱的行為を押しつけたイギリスに対する怒りが反乱を引き起こしたのである」
(同ページより抜粋)
これでまたひとつ賢くなったよ!
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